2009年8月から11月にかけて募集した「リモデルスマイル作品コンテスト」につきましては、皆様から多数の作品をご応募いただき、誠にありがとうございました。去る11月26日、27日に本審査が行われましたので、ここに審査員の講評、そして全国最優秀賞に輝いた作品をはじめとした上位入賞作品を発表いたします!
本年の応募総数は3416作品。前回の2979作品を大きく上まわる、過去最高数となりました。
昨年同様、「テーマ別」「空間別」に分けての募集でしたが、テーマ別部門(グリーンリモデル部門)については「家族構成・年齢変化に伴うリモデル」「めざしたい生活シーン実現のためのリモデル」など新たなテーマを設定し、多様化するお客様の動機の整理を試みました。
一方、空間別部門は、1つの部位をクローズアップすることで、ディテールまで配慮された完成度の高いリモデル作品が多く寄せられました。
「昨年よりテーマが整理された分、提案プロセスが明快で見やすくなった」と語るのは今井淳子先生。お客様の動機に対し、問題解決のアプローチがしっかり提示されており、とくにテーマ別部門で読み応えがあったと言います。「ヒアリングなどでお客様の目指したい生活を汲み取り、問題解決とともに新たな生活提案も加えている。いいリモデル作品は、台紙からストーリーが浮かび上がってきますね」。
竜口隆三先生も「2回目の審査となりますが、昨年よりも表現力がうんとアップしているね」と、作品のレベルアップに驚かれていました。ただ、「ユニバーサルデザインの専門家として見ていくと、仕上がりや細部への使い勝手にもう少し配慮してほしい作品もある」と、バリアフリーなど機器の採用だけで検討を終わりにせず、細部へのいっそうの配慮や視線の必要性も提言されました。
「写真」は作品のイメージを大きく印象づける、重要なファクター。しかし本コンテストにおいては、家具の置かれていない、いわゆる建築写真のようなカットだけでは高い評価となりませんでした。それは、リモデル後の空間がどう使われているか、という情報量の少なさによるものです。
言うまでもなく、リモデルの主役は生活者そのものであり、空間は豊かな生活を実現するための装置、手段。そのため、空間の美しさだけでなく、お施主様の喜びや満足感が伝わる写真の提示を希望されました。
そういう意味で審査員お二人が声を揃えるのが「リモデル後の検証の大切さ」。改修工事を終えたらそれで終わりでなく、時間をおいて再度訪問し、実際の使い勝手や満足度をぜひ確認してほしいとのことです。
「実際にどう生活をしているかを知ることが大切です。また、予期しない使われ方がされていることもあるなど、新たな発見の機会にもなるでしょう」(今井先生)
「使われ方を確認し、不具合があれば対応する姿勢が相手との関係を密なものにし、次の仕事にもつながります。当初の狙いと違った結果が起きていたとしても、次の課題として勉強となります」(竜口先生)
インターネットや雑誌、専門誌、ショールーム訪問などによってお客様の知識や情報量は飛躍的に増え、リモデルへの期待度も年々高まっています。プロの視点による提案によって、そんな感度の高い方々に対しても高い満足感をぜひご提供ください。
今井淳子先生
一級建築士、(株)あい設計主催
横浜市生まれ。工学院大学建築学科卒。「住まいの町医者」を目指して30年。建て主の想いを一緒に整理し、形にする。住まいを創るのは家族であるとの考えから、共働き、育児、同居、介護、趣味など、生活全般をテーマとする。著書に『定年後が楽しくなるリフォーム』(亜紀書房)などがある。
竜口隆三
西日本工業大学デザイン学部教授・博士(人間環境デザイン学)。東陶機器㈱(現TOTO㈱)にて長年水まわり設備機器・福祉機器を中心としたバリアフリー化の研究・開発業務に従事し、2002年同社内に設立されたUD(ユニバーサルデザイン)研究所の初代所長に就任。現在は西日本工業大学で教鞭を執るほか、国内外でUDを中心とした講演活動も精力的にこなす。